介護の大敵! お口の乾燥を「口腔ケア」で改善する

2022.02

要介護者のお口が乾燥していると口腔ケア中に痛みが生じたり、口腔ケアが大変になるだけでなく、全身の健康にも悪影響をもたらします。お口の乾燥の元となる唾液不足の原因は人によってさまざま。だからこそ一人ひとりの根本原因を考えて、適切な口腔ケアをしなければ乾燥は改善されません。

そこで今回はお口の乾燥の原因やそれによってもたらされる悪影響から、口腔ケアによる改善方法までトータル的にご紹介します。

お口の乾燥とは? 症状のサインを見逃さないために

お口の乾燥とは、唾液不足により口腔内の保湿力が低下して、お口の乾燥感、舌や口腔粘膜が乾燥した状態を指します。加齢をはじめ、口腔内の乾燥を引き起こすような疾患や薬の服用が増える高齢者に多く見られる症状です。

初期は軽度の乾燥感があるだけですが、次第に舌のざらつきや舌痛、粘つきを感じるように。「舌に痛みがないか」「口の中がザラザラしないか」「粘ついてないか」「口臭が気にならないか」といった質問を要介護者へ定期的に問診することで、早期発見が可能です。

もしも認知症などで自覚症状を伝えられる状況ではない場合、唾液分泌量や粘膜保湿度の測定によって症状を判断することができます。このほか舌乳頭(舌の表面の突起)の萎縮や粘膜の発赤や乾燥、たんの付着など乾燥のサインがいくつかあるので、介護者が定期的にチェックするようにしましょう。

要介護者に定期的に問診したいこと

  • 舌に痛みがないか
  • 乾燥している感じがあるか
  • 口の中にザラつきがあるか
  • 粘ついていないか

介護者がチェックするポイント

  • 舌の表面の突起が萎縮して、舌がつるつるになっていないか
  • 舌が赤みを帯びていないか
  • たんが付着するなど、乾燥症状が起きていないか

お口の乾燥を放置することで全身に悪影響も

唾液には口腔粘膜と歯に潤いを与えて保護し、緩衝、抗菌、自浄作用などの効果をもたらすほか、呼吸器官や消化器官、他の臓器を感染などから保護する役割があります。そのため唾液不足になってお口が乾燥すると次のような悪影響が出ます。

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  1. 口腔ケアの質の低下
    唾液不足により、口腔ケア中に粘膜が傷つきやすくなります。また乾燥した付着物は通常の口腔ケアで取り除くのが難しいため、介護者の負担が増えるだけでなく、力の入れ過ぎによって要介護者が痛みを訴える原因にもなりかねません。ケア中に痛みを感じた要介護者は口腔ケアを拒否するようになる可能性も高まるため、スムーズに口腔ケアを進めるためにも注意しておきたいポイントです。
  2. 要介護者のQOL(生活の質)の低下
    唾液が減ると虫歯や歯周炎が増加したり、入れ歯が合わなくなったり、痛んだりします。また食べ物を飲み込みづらくなるので食欲の低下、味覚異常や舌の痛み、口腔カンジダ症などの口腔粘膜疾患を発症しやすくなります。
    このほか逆流性食道炎(胃酸逆流症)になりやすく、風邪やインフルエンザの罹患率が倍増することも報告されています。お口の乾燥は単に渇きを感じるだけではなく、全身の健康にも悪影響を及ぼし、生活の質が低下してしまうというリスクをはらんでいます。

お口が乾燥する唾液不足の原因

唾液不足になる理由は、主に次の3つが考えられます。

  1. 開口症や口呼吸の習慣
    唾液の分泌量は正常であるものの、常に口が開いていたり、口呼吸をすることで乾燥してしまっていることがあります。特に高齢者の多くは、お口周りの筋肉バランスが崩れることによって「開口症」などを引き起こしている場合が多く、それが根本原因になっている可能性も考えられます
  2. 体内の水分量が減るような疾患や薬の服用
    発熱や下痢、糖尿病や多汗症などの疾患、人工透析や利尿薬の服用が原因で、水分が体外へ必要以上に排泄される脱水状態になると、唾液分泌量も減ってしまいます。
  3. 唾液の分泌機能の低下
    加齢やストレス、唾液腺の炎症や腫瘍、唾液腺組織の破壊などで唾液腺に異常が起きると、唾液の分泌機能が低下します。また抗うつ薬、抗ヒスタミン薬など唾液腺への神経伝達を抑制する副作用がある薬を服用することで、唾液腺が正常に機能しなくなります。

口腔ケアでできるお口の乾燥対策

お口の乾燥が生じている場合は、日々のこまめな口腔ケアで改善していくことが大切です。

  1. 水分を補う
    水を適量飲むことでお口の中を潤します。シュガーレスのガムや飴、夏場なら氷をひとかけら舐めてもらうのもおすすめ。マスクの着用、部屋の加湿も効果的です。
  2. 保湿
    唇や口腔内にワセリンやオリーブ油、グリセリンを塗布すると、皮膚や粘膜を保護し、汚れも落ちやすくなります。特に専用の口腔保湿ジェルは効果が長く続くのでおすすめです。ペーストタイプ、ジェルタイプ、液状タイプを症状によって使い分けると、より効果が期待できるほか、うがい薬や人工唾液も有効です。
  3. 口腔機能訓練やマッサージ
    舌体操・嚥下(えんげ)体操などの口腔機能訓練、唾液腺や口腔粘膜マッサージで唾液の分泌を促進しましょう。気持ち良い程度の力加減で、刺激を与えます。

お口が乾燥している要介護者への口腔ケア方法

お口の清掃を行う前に、唇をはじめ口腔内全体に保湿ジェルを塗布して皮膚や粘膜を保護します。乾燥でひび割れている部分からの出血や痛みを防げます。

すでに口腔内に乾燥している付着物がある場合は、保湿ジェルでふやかしましょう。しばらくおいてから、スポンジブラシなどでやさしく除去します。

体操やマッサージをしても唾液の分泌が足りない場合には、ケアの最後に口腔保湿ジェルを塗布するのがおすすめです。

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まとめ

適切な口腔ケアを継続して行うことで、お口の乾燥を改善・予防し、心身の健康を守ることにつながります。保湿ジェルのタイプもさまざまなので、要介護者の状態や好みにも配慮してピッタリのグッズを選ぶとより効果が期待できるでしょう。