口腔ケアを徹底したいなら知っておきたい訪問歯科診療のこと

2022.06

定期的に歯科医院で健診を受けることで、治療が最小限で済んだり、虫歯をはじめとする口腔トラブルを防いだりすることが可能です。しかし、様々な事情で自力での通院が難しい要介護者や高齢者の方は、口腔トラブルを抱えたまま我慢しているケースが少なくありません。そんなときには、訪問歯科診療を検討してみましょう。

今回は訪問歯科で受けられる治療や費用、メリットとデメリット、受けるときのポイントを詳しく紹介します。通院時にかかる体への負担や費用がネックで、歯の治療やお口の悩みを諦めていた方は必見です。

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訪問歯科診療とは?

訪問歯科診療は、自力での通院が難しい高齢者や要介護者が利用できるサービスです。認知症などの病気、車イス、寝たきりなど長時間の外出が難しい方でも、歯科医院に直接行かずに、自宅または施設で歯科治療や定期健診が受けられます。

歯科医師と歯科衛生士が必要な機材を持って往診に来てくれるため、特別に用意するものはありません。予約は本人以外にも、家族や介助者でもできます。

訪問歯科診療で受けられる治療

訪問歯科診療では以下のような治療が受けられます。外来とほぼ同じ内容ですが、医院によって多少異なります。

  • 虫歯治療
  • 入れ歯作成・修理
  • 抜歯
  • 歯周病治療
  • ブラッシング指導
  • 口腔ケア
  • 摂食嚥下(せっしょくえんげ)の治療

摂食嚥下の治療とは?

口腔機能が低下している方向けのお口のリハビリです。食べる力が不足すると栄養不足や免疫力低下のリスクが高まるため、口腔内の筋肉を刺激するトレーニングを行います。
食事に時間がかかる、食事中にむせることが多い、食べ物が口の中に残る、などが思い当たる方は相談してみましょう。

訪問歯科診療の費用

高額を請求されるのでは?と心配される方も多い訪問診療。ここからは、気になる費用について見ていきましょう。

訪問歯科診療は保険診療

訪問歯科診療は厚生労働省で決められた制度です。医療保険と介護保険が適用されるため、法外な費用を請求されることはありません。出張費や謝礼も不要です。
ただし、訪問先、受診人数、治療内容によって金額は変わります。また、制度で定められた範囲で、歯科医師たちの交通費(実費)がかかる場合があります。交通費が無料の医院もありますので、予約時に確認しましょう。

訪問歯科診療の費用の内訳

訪問歯科診療には、診療費+指導費+治療費がかかります。

  • 診療費…毎回の訪問診療にかかる費用です。医療保険対象。
  • 指導費(居宅療養管理指導費)…20分以上の指導を行った場合にかかる費用です。歯科医師は月2回、歯科衛生士は月4回まで算定します。介護保険対象。
  • 治療費…治療や口腔ケアの内容に応じて発生した費用です。医療保険対象。

訪問歯科診療のメリット

訪問歯科診療の主なメリットを紹介します。

1.慣れた場所で治療が受けられる

自宅や介護施設、病院など、普段生活している場所で受診が可能です。そのため、リラックスして治療に臨めるでしょう。
受診時間は20~30分ですが、体力や体調を考慮して治療を進めます。また、病院で受ける場合、主治医と相談しながら治療を行います。

2.移動の苦痛・負担がない

歯科医院に通うとなると、途中で階段があったり、人混みがあったりと、苦痛や体力の消耗が伴います。また、移動にはタクシーを使わざるを得ない方も多く、交通費がかさむ場合もあります。
訪問診療なら移動の負担や手段の心配はいりません。

3.同時に複数人の治療が行える

歯科治療を受けたい方が同じ場所に複数人いる場合、予約時に人数を伝えることで、同時に受診が可能です。
自宅で高齢の両親の介護を1人でしている場合、2人をそれぞれ通院させるのは時間がかかり、負担が大きくなります。訪問診療なら1回の訪問診療で2人分診てもらえるため、介助者の負担が軽減されます。

4.よりきめ細かな指導が受けられる

認知症・胃ろう・誤嚥性肺炎予防の専門的な口腔ケア、口腔機能改善トレーニングを受けることができます。
また、歯科医が受診者の生活状況や介護の状態、食生活を直接見ることができるため、より適切な治療や口腔ケアの方法を指導してもらえます。

訪問歯科診療のデメリット

訪問歯科診療にはいくつかデメリットもあります。事前に確認しておきましょう。

1.医院ごとに対応可能な地域が限られる

医院ごとに、訪問診療が可能な地域が決められています。そのため、住んでいる地域によっては、かかりつけの歯科医院の訪問診療が受診できない場合もあります。また、訪問診療を行っていない医院もあります。

2.持病で治療が限定される場合も

患者様が抱えている病気によっては、抜歯などの外科的処置ができない場合があります。

3.基本的に支払いは現金のみ

支払方法は現金に限定している医院が多いようです。手元に現金を用意しておく必要があります。

訪問歯科診療を受けるときのポイント

次の点を押さえておくと、スムーズに訪問歯科診療が受診できます。

  • 予約の際、症状・同一建物内の受診人数をきちんと伝え、おおよその費用も確認する
  • 保険証、お薬手帳を用意する
  • 現金を用意する

まとめ

自力で歯科医院に行けない要介護者・高齢者にとって、訪問歯科診療はとても心強いサービスです。口腔トラブルの放置は、お口の健康だけでなく全身の健康の悪化につながります。お口を定期的に専門家に見てもらい、口腔ケアを徹底しましょう。