要介護高齢者にとって、口腔ケアの重要性とは?

2023.02

若いころから健康には自信があると思っていた人も、加齢とともに全身にあらゆる変化が現れてきます。
それは口腔内も同じで、年齢を重ねると口腔の状態も変わっていきます。
特に高齢者特有のお口のトラブル等もたくさんあるので、毎日の口腔ケアが欠かせません。
ましてや介護を必要としている高齢者はご自身で口腔ケアを行うことが難しく、口腔の状態が良いとは言えません。口腔内の状態が悪いと全身の健康に悪影響となることもあります。

そこで今回は、介護が必要な高齢者(要介護高齢者)にとって、口腔ケアがどれほど大切なのか、その重要性と、口腔ケアのポイントをご紹介します。

口腔ケアの目的

口腔ケアとは、お口の中を清潔に保つためのケアを指します。
むし歯や歯周病にならないためのケアだけでなく、全身の健康を保つために有効です。
なぜなら、口腔内は雑菌・細菌が繁殖しやすく、いったん細菌が繁殖してしまうと、その細菌が口腔内の病気だけでなく、要介護高齢者にとっては死に繋がるような病気になる場合もあるからです。
特に、自身で口腔ケアを行うのが難しい要介護高齢者の口腔内は、予想以上にひどい状態になっていることもあり、周囲のサポートが欠かせません。

口腔ケアの種類

口腔ケアには2種類あります。

まずは、「器質的口腔ケア」です。
これは、お口の中を清潔に保つために行うケアのことを言います。
むし歯や歯周病などを予防し、お口の中の粘膜と舌の汚れや苔を掃除し、お口の中をきれいに保つことで、誤嚥性肺炎などの感染症を防ぎます。

次に、「機能的口腔ケア」です。
これは、口腔機能(話す、食べる、笑うなど)を維持し、その機能を更に増進させることを目的とした口腔ケアを指します。
機能的口腔ケアを行うことで、脳への適度な刺激をもたらして表情も豊かになり、自身のお口からおいしく食事ができるので、今後の介護予防のリハビリテーションとして注目されています。

要介護者のお口の中の状況とは?

人間のお口の中は、常に37度前後の温度で保たれています。
唾液があることで食べ物が通過しやすく、乾燥も防いでくれています。
それと同時に細菌が増えやすい環境でもあります。

要介護者は入れ歯を使用していることが多く、お口の中や入れ歯の清掃がきちんとできていないと、お口の中に細菌が繁殖してしまいます。口腔ケア不足のためお口の中が不衛生になり、このお口の状態で誤嚥をしてしまうと「誤嚥性肺炎」を発症し、最悪の場合、死に至ることもあります。そうならないためにも、要介護者こそ、日々の口腔ケアは重要なのです。

要介護者の口腔ケアとは?

日本は今後、超高齢社会になることが確実だと言われており、高齢化が進み、要介護者も増えていきます。

要介護高齢者になると、身体の機能だけでなく口腔機能も徐々に低下していきます。口腔機能が低下すると、食事がおいしくできなかったり、食べたものが口の中に残りやすくなります。その結果、細菌が繁殖し全身に波及することで免疫機能の低下を引き起こすことは先述の通りです。

全身の健康を維持するためにも、まずは正しい口腔ケアを行うことが大切です。
では、正しい口腔ケアとは一体どのようなものでしょうか。
手順をご紹介します。

⓵うがい

まずはお口の中の汚れを軽くとるために、うがいをします。
この時のポイントは、正しい姿勢で誤嚥を防ぐことです。

②歯磨き

歯ブラシを鉛筆のように持ち、歯石が溜まりやすい歯と歯茎の間を重点的に磨き、唾液が溜まったら定期的に拭き取ったり、吐き出してもらいます。
また、歯ブラシで磨く際は優しく、歯茎を傷つけないように心がけましょう。

③舌の掃除

専用の舌ブラシを使用して行います。
舌の上に舌ブラシをのせ、奥から手前に動かします。乾燥が著しい場合は痛みを伴ってしまうので、湿らせてから行うのがポイントです。

④口腔清拭

口腔清拭は、体を起こすことが難しい場合やお水を口に含めない、歯ブラシを口に入れることができない場合に行います。スポンジやスポンジブラシを湿らせ、お口の中の細部まで掃除し、食べもののカスなどを取り除き、お口の中を湿らせます。

⑤義歯の掃除

義歯には総義歯と部分義歯があります。
総義歯を扱う場合は、まず流水で洗った後、大きな汚れをブラシ等で取り除き、その後、目には見えにくい汚れは洗浄剤を使用し、清掃・除菌します。
部分義歯の場合は、総義歯の方法に加え、金属部分は入念に磨きましょう。

これらの手順を軸に口腔ケアを行いましょう。

要介護者の口腔ケアのポイントとは?

口腔ケアをする際、まずは口腔内に問題がないかを観察します。痛みがあると口腔ケアを嫌がることがあるので、その原因となる歯茎の腫れや口内炎、義歯による口腔内の傷がないかを入念に観察します。
次に、要介護者の障害や介護の度合いによって異なりますが、介助を最小限にとどめることを心がけましょう。これは、過度な介助によって本人の残っている能力をすべて奪ってしまう結果となってしまうからです。本人ができることは見守り、不足分をケアするようにしましょう。
そして、誤嚥に注意しましょう。嚥下機能が低下している高齢者は多く、注意が必要です。顔を横に向けたり、あごを引き、水分やお口の中の汚れが気管に入らないよう注意をしましょう。使用する水分はできる限り少なくし、余分な水分はガーゼ等で拭っていきます。
最後に、口腔内の乾燥に注意しましょう。加齢とともにお口の中は乾燥しがちです。口腔内が乾燥することで、細菌が増加します。そして粘膜の炎症や感染症も引き起こします。
口腔ケアを行う際にお口が乾燥していると、痛みを伴う場合があります。そんな時は舌体操や嚥下体操、唾液腺のマッサージや口腔粘膜のマッサージを行い、唾液の分泌を促しましょう。

まとめ

今回は要介護者への口腔ケアとその重要性についてまとめました。
いつまでもおいしくご自身の口で食事ができるように、むし歯や歯周病等を予防し、また全身の健康を維持するためにも日々の口腔ケアはとても大切です。ぜひ、積極的に楽しく日々の口腔ケアを行いましょう。