歯科衛生士なら知ってる?高齢者のブラッシングのコツ
2023.05
今回は基本中の基本、ブラッシングのコツを「高齢者」に焦点を当てて考えていきたいと思います。
ブラッシングとは本来、気持ちいいものですよね。
皆さん普段のケアは上手くいっていますか?
むし歯や歯周病の予防に夢中になって、大切なことを忘れていませんか?
患者様にとって、ブラッシングケアの時間が心地よい癒しの時間となるには何が必要なのか、一緒に考えていきましょう!
各ケアの手順とコツ
心地よい癒しの時間にするには、いかに不快感(痛み、時間、温度、味、触り方)を減らし、快感(ツルツル、しっとり、さらさら、スッキリ、さっぱり、美味しい)を増やすかがポイントとなります。しかも、高齢者の場合は歯を磨くだけでなく、舌や粘膜のケアも必要になってきます。素早く、優しく、心地よくケアするコツをご紹介します。
歯を磨く
歯磨きで汚れを落とす際、可能であればフッ化物入りの歯磨剤を使用しましょう。
水なしで使える歯磨剤ならすすぐ手間をカットできるだけでなく、お口の中に残るフッ素の量を多くできる可能性が高まります。
最近は、フッ化ナトリウムだけでなく、フッ化第一スズも入っているものも出ています。
フッ化第一スズは、歯質強化、再石灰化といったむし歯予防だけでなく、歯周病予防にも効果的です。 スズイオンが含まれているため強い殺菌作用があり、むし歯や歯周病の原因となる菌を減らしてくれます。賢い選択をして口腔ケアの効果を高めていきましょう。
それでは、具体的に歯を磨く手順やコツをおさらいしましょう。
必要なもの
歯ブラシまたはスポンジブラシ
保湿ジェル
手順
- まずは保湿ジェルを唇や頬に塗る。いきなり歯ブラシを入れてはいけない
- プラークを可能な限り除去する。頬側だけでも頑張れば全体の6割ほど落ちる。
歯がない患者様の場合は、義歯と粘膜の両方を磨く。歯は2本ずつ、5〜10回シャカシャカ細かく、優しく動かして磨く
コツ
- ブラシを立てたり、くるくると動かしたりする
- 磨き忘れ箇所がないよう、行ったり来たりしないでひとまわりで磨く
- 舌側はブラシを縦斜めに挿入し、ブラシの先の1/3だけ当てる
舌ケアをする
なぜ舌ケアが必要なのでしょうか?
それは舌に細菌がついていると、誤嚥性肺炎につながるためです。
舌をマッサージをしたり、運動させるチャンスなので、この時間をうまく活用しましょう。
必要なもの
スポンジブラシ
保湿ジェル
口腔ケア用ウェットティッシュ
手順
- 舌をベーっと出してもらう
- スポンジブラシを使って、奥から手前にサッサッとブラシがけする。
いきなり奥から始めずに、先端のほう→真ん中あたり→奥の順で磨く - 可能であれば、スポンジブラシで舌を揺らしたり、スポンジブラシを押し返してもらうなどの負荷をかける運動をする
- 硬い舌苔には、保湿ジェルをたっぷり染み込ませたスポンジブラシをトントンと当ててふやかし、奥から手前に向けてブラシを動かし除去する。指や歯ブラシに保湿ジェルをつけて行ってもよい。その場合、舌が傷つきやすいので優しく行うよう心がける
コツ
- 舌はとても敏感なのでいきなり触らない
- 汚れは1回では取れないこともあるため、一度に全部取ろうとしない
- 粘膜痂皮や舌苔はふやかしてから取る
- 舌が引っ込んでいてケアしづらい場合、そっと掴んで引き出してみる
- オエッとなったらすぐやめる勇気をもつ
粘膜ケアをする
高齢者は乾燥や筋力の衰えにより、食べかすや細菌、剥がれた粘膜がこびりついてしまいます。このような環境は細菌が繁殖しやすく、その結果、誤嚥性肺炎につながってしまうため、粘膜ケアが必要なのです。
それだけではなく粘膜ケアをすると、
- 剥がれた粘膜を除去し、粘膜をフレッシュにする
- マッサージ効果により、唾液がよく出るようになる
- 味がよく感じられるようになる
- お口に入った異物に気付くようになる
といった効果も期待できます。
必要なもの
スポンジブラシまたは非常に柔らかい歯ブラシ
口腔ケア用ウェットティッシュ
保湿ジェル
手順
- 頬粘膜を中心に保湿ジェルをたっぷりと塗る
- 歯茎や頬の内側を、奥から手前に向かってスポンジブラシでなぞるように清掃する
- その際、一緒に口腔周囲筋ストレッチ(https://quom.jp/blog/20230411/)も行う→筋肉が動く、唾液が出る、血流をよくなる
- 舌をあげてもらい、スポンジブラシで唾液を吸う
- 硬口蓋をやや力を入れ気味にしてシュッシュッとブラシがけする
コツ
- 各小帯(上唇小帯、下唇小帯、頬小帯、舌小帯)に注意する
- 柔らかいスポンジブラシを使用する
- 口腔周囲筋ストレッチを丁寧に行うと唾液分泌させ、汚れがより取りすくなる
- こびりついた汚れには、保湿ジェルを汚れの辺縁に塗布するとペロンと剥がれやすい
- 硬口蓋は、優しく触られるとくすぐったいので、力をやや入れ気味にする
- スポンジブラシは、オドオドせずに思いっきり動かす
唾液でお口の中が潤うこと、舌の力がつくことで自然と汚れが取れるようになります!
口腔周囲筋ストレッチ、舌の運動、保湿ジェルの活用で改善を目指しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
高齢者のケアは、むし歯や歯周病予防、舌や粘膜のケアなど、やることも、また必要な知識も盛りだくさんですが、素早く、優しく、心地よく行うことが大切です。
そのためには手技の向上、賢い道具の選択、正しい知識が欠かせません。
口腔ケアの時間がお互いにとって気持ちのいい時間となるよう、一人一人が工夫し研鑽を重ねていきましょう。
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。