認知症の患者さんについて理解を深めるためには?
2023.06
今回は、認知症の患者様の対応について考えていきたいと思います。高齢化に伴い、認知症の患者数は増加しています。65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症患者数が462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)でしたが、令和7年(2025)年には約700万人と、5人に1人になると見込まれています。(内閣府平成28年版高齢社会白書(概要版) 第1章 高齢化の状況(第2節 3)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_2_3.html)
これらの数字からわかるように、これからの歯科医師や歯科衛生士は認知症の患者様について理解をより深め、一人一人に合った対応、対応力、対応の幅を身につけていく必要があります。
認知症の患者様の対応のプロである介護士さんたちの中でも、多くの方が介護拒否にあった経験があるそうです。
介護士の方よりも患者さんに接する時間が短い私たちは、より研究と工夫が必要ではないでしょうか。
一緒に学んでいきましょう!
認知症の人の世界を理解する
認知症の患者様はいわば、不安や恐怖、孤独の世界にいる状態です。
自分が自分でなくなる、できないことが増えていく、そんな自分の記憶力や判断力が衰えていることを自覚しているけど、どうにもできない・・・。
そういった時に感情がコントロールできず、暴言や暴力が出ることもあるそうです。
そのような方々に、私たちの常識を押し付けたらどうなってしまうでしょうか。
自尊心を傷つけ、拒否につながってしまうことは容易に想像がつきますね。
どの患者様にも言えることですが、まずは患者様の置かれている状況に寄り添い、理解を示すことで、信頼関係を少しづつ築いていきましょう。
リラックスした雰囲気を大切に
いつものスタッフで、いつもの患者様に会いに行っても、覚えていていただけるとは限りません。
そのため、常に初対面のつもりで接しましょう。最初に自己紹介をして、その後「おしゃべりに来ましたよ」などと雑談を交えながらリラックスした雰囲気を作ることで緊張を和らげ、緊張感や拒否を減らすことができます。
また、いきなり口を触るのではなく、手や肩、顔のマッサージをしてからお口のケアに入るのも有効的です。
ケア中、「頑張っていただいていますね」「綺麗になってきましたよ」とこまめに声かけをし、ケアが終わったら、「ケアをしたらスッキリしましたね」と確認をするように話しかけます。
そして、忘れてはいけないのは、最後に「お口を開けてくださってありがとうございました。またケアをしに伺います」と、お礼と挨拶をするということです。
そうすることで、口腔ケアが楽しく気持ちの良いものと理解していただきやすくなり、もしかしたら私たちのことを覚えていただけるきっかけになるかもしれません。
声かけの努力を怠らない
上記でも述べましたが、患者様のご協力を得るためには、声かけはとても大切なことです。声かけが苦手な方も、次にご紹介するポイントを意識して取り組んでみましょう。
最低限のマナーを守ること
認知症の患者様は人生の先輩がほとんどです。目上の方に対する敬意を忘れてはいけません。敬語で話す、「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく、しっかり名前でお呼びするといったこともポイントです。
ゆっくり、はっきり話す
声のトーンをやや高めにして安心感を与え、ゆっくり話して言葉を理解しやすく、はっきり話して聞き取りやすくしましょう。
特に認知症の患者様には、相手を安心させてあげられるような声かけが重要です。ここがどこで、今何をしていて、何のために話しかけているのかを、ゆっくりはっきり伝えるように意識しましょう。
また、大きな変化は混乱を招く恐れがあるので、普段の手順やリズムを変えずに進めることも大切です。
笑顔で目線を合わせて話す
認知症の患者様は視界・視野が狭くなっているので、驚かさないためにも正面から話しかけましょう。
共感し、受け入れて安心を与える
「自分が受け入れてもらえない」と感じた時、より強く自己主張する傾向があるため、患者様が何を望んで、どのようなことを言っているのか考え、決して否定することはせず、優しく対応するように心がけましょう。
ケア用品の力を借りてスムーズなケアを目指す
皆さんはお気に入りの歯みがき剤や歯ブラシはありますか?
味が好き、気持ちが良い、スッキリするなど、使用感の良いものは使い続けたくなりますよね。
認知症の患者様だけでなく高齢者の方も、お口の乾燥が気になっている方が多いので、しっとり感を求める方もいらっしゃるでしょう。
ケアの最初や仕上げに美味しい味の保湿ジェルを塗って差しあげるのはいかがでしょう?
喜んでいただけると同時に、その日のケアが良い記憶へとつながり、その後のケアでより協力的になっていただけるかもしれません。
最近は、拭き取りや吐き出しが不要なものもあるので、認知症の患者様にも使いやすいアイテムを取り入れていきましょう。
まとめ
認知症の患者様お一人お一人の世界を理解すること、優しい声かけをすること、使用感の良いケア用品を選ぶ、この3つのポイントを意識して、患者様にとって気持ちの良いケアを続けていくことが、ケア継続&成功のカギになるのではないでしょうか。
この記事が、少しでも皆さんのお仕事の参考になれば幸いです。