認知症と口の渇きの関係は?
2023.06
認知症の方は、口の渇きを自覚しにくいことをご存じでしょうか。
介護者は要介護者の口の渇きを見過ごさず、適切な口腔ケアをしなければなりません。
そこで今回は、認知症と口の渇きについてご紹介していきます。
口の渇きに認知症が関連する?
認知症とは、何らかの理由で脳の認知機能が低下している状態のことです。進行していくと社会生活が困難になり、介護を受けながら生活しなければなりません。
認知症の方は、自分が水分を摂取したのかどうかも失念してしまい、口腔が渇きやすいといわれています。
さらに喉の渇きの感覚機能である口渇中枢が加齢と共に減退して、口の渇きを感じにくい方が多いです。
口の渇きは口腔内トラブルの原因になり、要介護者のQOLにも大きな影響を与えます。
水分不足は妄想や興奮などのせん妄を引き起こす要因という研究結果もあり、認知症の方の口の渇きは見逃してはいけません。
口の渇きを予防する方法
普段からできる口の渇きを未然に防ぐ方法を、3つご紹介していきます。
こまめな水分補給
口の渇きを予防するには、適切な量の水分補給が大切です。認知症の方は水分をいつ補給したのか、そもそも水分補給が必要なのか判断できない場合が多いため、介護者が水分補給を促すように声を掛けることが大切です。以下のような取り組みが有効的でしょう。
- 水にこだわらず好きな飲み物をすすめる
- 経口補水ゼリーや寒天ゼリーなどを上手く使う
- お茶飲み友達を探しているといった声掛けをしてみる
- 時間を決めて水分を摂取してもらう
注意点として水分の摂り過ぎは誤嚥性肺炎につながるので、適量を心掛けることが大切です。一般的な高齢者は、1日に1,500mlの水分が必要といわれています。食事からも水分を摂取できるので、1日の水分量にも気を配るとよいでしょう。
適切な衣類調節や温度調節
認知症の方は、衣類調節や温度調節を上手くコントロールできないときがあります。温度を感じなくなるため、室内の温度・湿度の管理が難しくなる方が多いです。
そのため夏場でも厚着をしたり、エアコンを消したりして、口腔内を含む体中の水分量が減ってしまいます。
季節に応じた衣類を用意し、夏場にはエアコンを付けることの大切さを繰り返し伝えていきましょう。
口腔内の保湿
口の渇きの予防のために、保湿ジェルなどを使って口腔内の保湿を行うこともおすすめです。口腔内を保湿することにより、食事がスムーズにできるようになったり、口腔機能訓練のサポートになったりします。
ただ口腔内の保湿を嫌がる認知症の方もいるため、アイテム選びが大切です。様々な種類がありますが、口の力が弱くなった方にはジェルタイプがおすすめです。
ジェルタイプであれば、口腔用スポンジブラシやスプーンを使い、口腔内に塗布できます。
また保湿ジェルのフレーバーも大切です。認知症の方が受け入れやすい味や、味覚を刺激して唾液を促すようなフレーバーが望ましいでしょう。例えばレモン果汁とはちみつがベースになっているような商品などは、ほどよい酸味と甘みが口腔内の保湿をサポートします。
口の渇きと口腔ケア
口腔ケアは、認知症の予防や進行を遅らせる効果が期待できます。適切な口腔ケアを行うと、口の渇きの改善にもつながるでしょう。口腔ケアのポイントをご紹介していきます。
無理なく行う
認知症の方の中には、口の中を触られるのを拒否したり、意思疎通が難しくなったりして、スムーズに口腔ケアができないときがあります。
その際に無理に行おうとすると、信頼関係を損なうかもしれません。信頼関係が崩れてしまうと要介護者が心を閉ざしてしまい、ますますケアが難しくなります。
認知症の方が機嫌のよいときに無理なく行うようにして、無理強いはしないようにしましょう。
声掛けを行う
実際に口腔ケアを行う際は、声掛けをしながらケアするようにしましょう。口腔はデリケートな部分であり、いきなり触れると認知症の方を驚かせてしまいます。
「これから左の奥にスポンジブラシを入れますね」といった、次にどのような口腔ケアを行うか、言葉にして丁寧に伝えていきましょう。
認知症の方が安心できるにはどのような声を掛けるとよいか、その方の性格や認知症の進行状況にあわせて工夫してみてください。
姿勢に注意する
口腔ケアを行うときは、認知症の方の姿勢に注意しましょう。姿勢が悪いと誤嚥につながる恐れがあります。
認知症の方も介護者も、無理のない姿勢になるように工夫してください。認知症の方には、椅子に深く腰掛けてもらうようにしましょう。寝たきりのときには、側臥位にすると汚れた液体が喉に流れにくいです。
まとめ
認知症の方は口の渇きを自覚しにくく、脱水症や口腔トラブルが進行しやすいため、周りの方は口の渇きを見逃さないことが大切です。
無理なく口腔内の保湿や口腔ケアを行い、口腔内を清潔に保ち、口腔乾燥を予防しましょう。