口臭の悩みを解決したい!ケアのポイントは舌ってホント?

2023.07

皆さん、こんにちは。歯科衛生士の中村です。
今回のテーマは、歯科衛生士が行う口臭ケアです。患者様にお口の悩みを聞くと、必ずと言っていいほど挙げられるのが口臭の問題です。その傾向は年齢層が上がるほどに高まっているように感じます。
口臭の問題は、ご本人の生活の質、ひいては尊厳にも関わる重大なテーマです。口臭は自己識別が難しいこともあり、気にする人がいる一方、強い臭いを自覚していない人もおり、社会的な問題となっている面もあります。
一人一人が日々を少しでも気持ち良く過ごせるよう、歯科医師・歯科衛生士ができる口臭ケアについて解説します。

口臭の種類

まずは口臭の原因や種類についておさらいしましょう。

①生理的口臭

起床時や緊張した時など、口腔内が乾燥した時に発生します。また空腹時にも発生します。基本的に健康な人でも起こりますが、時間の経過とともに減少します。

②外因的口臭

臭いの強い食べ物やアルコール、喫煙により体内に取り込まれた臭いの元になる成分が胃の中で消化され、血液を介して全身に循環し、肺を経由して体外に吐き出されたものです。
時間とともに減少するため、問題ありません。

③病的口臭

病気の症状として起こる口臭のことですが、最も頻度が高い原因と言われます。むし歯や歯周病、詰め物の劣化、舌の汚れ、唾液減少による自浄作用の低下など、口腔内の細菌が増殖することにより起こります。

鼻の疾患や胃腸関係の疾患、糖尿病などが口臭の原因となることもあります。
病的口臭は口臭の原因となる病気が明確で、口臭の元となる病気を治療することで口臭を改善することが可能です。

口臭を発生させる舌のケアが重要

口臭を発生させているのは、ずばり舌です。口臭の6割が舌から発生していると言われています。
細菌や食べ物のかす、口腔内の粘膜がはがれたものなどが付着した舌の汚れ「舌苔」は、歯垢などと同じく細菌の塊のため、口臭の原因となります。
舌苔は日々のケアで舌を丁寧に磨くことで、少しずつ取り除くことができます。舌苔がたまりやすい条件や対応方法を確認していきましょう。

舌苔がたまりやすい原因と条件

以下のような人は舌苔がたまっている傾向にあります。

  • 舌の動きが低下している(加齢による筋力の低下、よく噛まない、柔らかい食事を好む、会話の減少)
  • 唾液の分泌量の低下や口呼吸、ストレスによって口腔内に乾燥が起きている
  • 口腔内の清掃が不足している
  • 消化機能の不調がある
  • 栄養不足がある
  • 免疫力が低下している
  • 薬の副作用
  • 喫煙者

上から3つ目までについては高齢者にしばしば当てはまりますので、歯科医師や歯科衛生士の介入ポイントになるのではないでしょうか。

舌苔がたまっている場合のケア方法

舌ケアのポイントをいくつかご紹介します。

まず、舌苔は舌の中央部から後方(咽頭の方)へ近づくにつれて付着しやすくなっています。
その理由は、舌の付け根に近い奥の部分が唾液で洗い流されない、舌の運動時に上あごとこすれることが少ないなどが原因です。
そのため、ケアをする際は舌をベーっと出していただく、またはウェットシートなどを使用して滑らないようにしてから、舌先を優しくつまんで引き出してあげるとよいでしょう。

この時に気を付けたいのは、いきなり舌に触らないことと、手早く行うことです。舌は人に触れられることがあまりない、とても繊細な場所です。一声おかけしてからケアを始め、効率的に行うようにしましょう。

舌を出していただいたら、柔らかい歯ブラシか舌ブラシ、またはスポンジブラシで優しく奥から手前に一方方向にこすります。一度に全ての舌苔を取ろうとせず少しずつ取りましょう。

乾燥が強く舌苔が固くて取れにくい場合は保湿ジェルを使うことも有効です。ジェルで汚れを柔らかくふやかすと汚れが取れやすくなります。

保湿ジェルを使うことの利点は他にもあります。
ケアに保湿ジェルを取り入れることにより、ケア後の乾燥対策にもなります。乾燥による口臭も防ぎ、潤うことで舌を動かしやすくなり、その結果、さらに舌苔が付着しにくい環境を作っていくことができます。
可能であれば一緒に唾液腺マッサージを行って唾液分泌を促し、自浄作用を高めるお手伝いもしましょう。

また、口臭の原因菌を殺菌するという意味で、殺菌効果の高い歯みがき剤を使用するのも効果的です。うがいができる方であれば、仕上げに殺菌効果のあるうがい薬を使用してもいいですね。

このように、細菌の塊である舌苔や歯垢を口腔ケアで落としたり、保湿ジェルや歯みがき剤の力を借りて保湿や殺菌で細菌のコントロールをするなど、多角的なアプローチを試みましょう。

舌体操もおすすめ

舌体操には、唾液分泌促進、筋肉を刺激し舌の動きをよくするなどの効果があります。

  1. 舌を出したり引っ込めたりを5回繰り返す。
  2. 舌をできるだけ前に出して、左右に動かす。口の周りをなめるようにゆっくり回す。
  3. 舌を出して、上下に動かす。鼻の頭やあごをなめるくらい思いきり動かす。

まとめ

いかがでしたか?
今回は口臭の一番の大きな原因である、「舌苔」について詳しく解説しました。
歯周病やむし歯による口臭が一番大きな原因かと思いきや、舌苔が大きく原因していることを意外に思った方もいらっしゃるでしょう。

特に高齢の患者様はご自身での舌のケアが難しい、またはそもそも舌のケアをする必要性を知らない方も多いかもしれません。
丁寧に説明し、優しく継続的なケアで、口臭にまつわるお悩みを解決していきましょう。