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訪問歯科における口腔ケアを効率よく安全に進めるコツとは?便利なケア用具を紹介

2023.09

みなさんこんにちは!歯科衛生士の久保です。
今回は、訪問歯科での口腔ケアをスムーズに進めるコツと、ケア用具の活用方法についてのお話です。

訪問歯科を必要とする患者さんは、身体的な制約や認知機能の低下などにより、口腔ケアが困難になる場合があります。
患者さんへの負担を少なくするためにも、できるだけ効率的に進めたいですね。

様々なケア用具を使いこなせるようになると、限られた時間の中で、より効果的に安全に口腔ケアを行うことができます。
患者さんの笑顔を支えるために、ぜひ参考にしてみてくださいね。

口腔ケアのお悩み

まずは、口腔ケアの際に医療従事者が直面する問題についてみていきましょう。

①口腔ケアへの抵抗

患者さんが口腔ケアを拒否するという状況は、非常によく直面する問題のひとつです。
患者さんの認知機能の低下により口腔ケアの必要性を理解できない場合、お口を開けてもらえなかったり、強い抵抗を示したりすることがあります。
これは口腔ケアに対する不安や痛み、口腔内の違和感によるものです。

無理やりケアを進めようとすると患者さんの負担になることはもちろん、口腔ケアを提供する私たち自身の怪我を引き起こしたり、器具が破損したりするリスクもあります。

②嚥下障害

高齢者や身体障害者には、嚥下に障害を抱える人もいます。
嚥下障害は、加齢や筋力の低下、脳血管疾患の後遺症など様々な理由で引き起こされ、唾液や細菌が気管支に侵入しやすい状態になります。

歯みがき剤や過剰な水などと共に細菌を誤嚥してしまうと、誤嚥性肺炎につながり命に関わる場合もあります。口腔ケアによる二次感染を防ぐためには特別な配慮が必要です。

③舌や粘膜の汚れ

口腔ケアを必要とする患者さんは、歯だけでなく舌や頬、唇の粘膜などにも汚れが溜まっている場合があります。
これは、普段の生活で会話が少なくあまりお口を動かさないことや、お口から食事を摂っていないことなどが原因として挙げられます。

舌や粘膜は柔らかく、特にデリケートな部分です。強固に付着した汚れを除去する際は、傷つけないよう注意して行う必要があります。

口腔ケアを効率よく安全に進めるコツ

スムーズな口腔ケアを行うために、様々なケア用具を活用してみましょう。
個々のニーズや口腔内の状態に合わせてケア用具を選択し、適切な方法で使用することが大切です。

①フレーバー付きの保湿ジェルを使用して導入を行う

口腔ケアに対する拒否が強い患者さんに対しては、まずケアに慣れてもらうところから始めましょう。
いきなり歯ブラシやミラーをお口に入れるのではなく、最初は口周りの筋肉をほぐしたり、口唇に触れてみたりなど徐々にステップアップすることで、患者さんの安心や理解につながります。

導入の際は、口唇に保湿ジェルを塗布して乾燥を緩和し、お口を開けやすい環境を作ることが効果的です。
はちみつなどの甘いフレーバーのジェルを口唇や口腔内に塗布することで、自然とお口を開けてもらえるよう促してみましょう。

胃ろうや静脈栄養法などで経口摂取をしていない患者さんや意識レベルが低い患者さんの場合も、味覚による刺激を期待でき、ケアへの協力が得られる可能性があります。

本来、口腔ケアはとても気持ちがよいものです。そのことを患者さん自身に気づいてもらうために、焦らずゆっくり開始しましょう。

②誤嚥しにくい歯みがき剤や保湿ジェルを使用する

誤嚥しやすい患者さんの場合は、誤嚥を防ぐ工夫のあるケア用品を選択することで、安全かつ迅速に口腔ケアを進めることが可能です。

むし歯や歯周病予防に効果的な歯みがき剤は、水で流す必要がないタイプのものを使用してみましょう。
歯みがきの後の拭き取りや吸引管で吸い取るだけで除去できるため、口腔内に水分が溜まりにくく、誤嚥を防ぐことができます。うがいができない患者さんにもぴったりです。

また、口腔ケアは口腔内の乾燥を緩和するために保湿ジェルを塗布しながら行うことも多いですが、過剰に使用すると喉に垂れてしまったり、口腔ケア後にジェルが固まったものを誤嚥してしまったりする可能性があります。
誤嚥が心配な患者さんには、塗り広げやすく固まらない保湿ジェルがおすすめです。使用量を軽減でき、誤嚥のリスクを低減してくれますよ。

③粘膜の汚れはスポンジブラシを活用する

傷つきやすい粘膜や敏感な歯ぐきの汚れには、スポンジブラシを活用しましょう。
柔らかな素材を使用して作られたスポンジブラシは、歯ブラシよりも柔らかく、口腔内のデリケートな部分を優しく清掃することができます。
使う面によって形が変わるタイプのスポンジブラシなら、1本で用途に合わせて使用することができて便利です。
加えて、持ち手部分の耐久性や吸水力が高いものを選べば、更に口腔ケアの効率アップにつながります。

まとめ

口腔ケアに対して抱えている問題は人それぞれです。
ひとりひとりの患者さんに合わせた口腔ケア用具を選択することで、患者さんの負担を軽減しながら、効果的なケアを行うことが実現します。
ケア用具の特徴を理解し、気持ちのいい口腔ケアの提供を目指しましょう!