誤嚥性肺炎を防ぐには?

2023.08

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という肺炎をご存じでしょうか。
高齢化が進む我が国において、肺炎にかかった高齢者の70%以上が誤嚥性肺炎だといわれています(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000135467.pdf)。誤嚥性肺炎は、在宅介護中に特に注意したい病気のひとつといえるでしょう。

今回は、誤嚥性肺炎を防ぐにはどうすればよいのか、ご家庭でできることを中心にご紹介します。

誤嚥性肺炎とは?

誤嚥性肺炎とは、細菌を含んだ食べ物や飲み物などが気管に入り、さらにその気管から細菌が肺に侵入して起こる炎症のことです。

主な症状は一般的な肺炎の症状と似ています。

  • 発熱
  • 長い間咳が続く
  • 元気がない
  • 食欲不振になる
  • 肺雑音

ただし高齢者の場合は症状が出にくく、気が付いたら症状が進んでいるケースも少なくありません。そのため、症状によっては命に関わることがあります。

高齢者は飲み込む力が弱っているため、誤嚥性肺炎になりやすく注意が必要です。
普段の様子を観察し、誤嚥性肺炎を疑ったら早めにかかりつけのドクターに相談してください。

誤嚥性肺炎を防ぐためにはどうすればよい?

誤嚥性肺炎は兆候を見逃さないことに加えて、予防することが大切です。誤嚥性肺炎を防ぐために、在宅介護でできることをご紹介します。

  • 食事の内容を見直す
  • 食事中や食後の姿勢に注意する
  • 喉の筋肉を鍛える
  • 丁寧な口腔ケアを心掛ける

食事の内容を見直す

高齢者を在宅介護しているときは、本人が食べやすく、飲み込みやすいように食事内容を見直しましょう。

食べ物を口から胃に運ぶ動作を嚥下(えんげ)と呼びます。この嚥下が思ったとおりにいかないことで、誤嚥性肺炎にかかることがあります。

要介護者の嚥下機能にも左右されますが、誤嚥になりやすい以下のような食べ物は避けたほうがよいでしょう。

  • お茶や水のようなとろみのない液体
  • スープや味噌汁のように、液体と固体が使われている料理
  • 芋類やひじきなど、水分が少なくボロボロしている食べ物

食材を食べやすい形に切ったり、とろみをつけたメニューにしたりするなどの一工夫が、誤嚥性肺炎の予防につながります。

無理のない範囲で、誤嚥性肺炎の予防を意識したメニューを取り入れていきましょう。

食事中や食後の姿勢に注意する

誤嚥性肺炎のリスクを下げるために、食事はなるべく座位で行いましょう。寝たまま食事をすると、誤嚥しやすいためです。

座位で食事をする際は、要介護者に椅子に深く腰掛けてもらい、足が浮いていないか確認します。また、重心が前にあることが理想のため軽い前傾姿勢にして、背中がまっすぐ伸びてしまっていないか確認しましょう。

座位が難しいときは、30度ぐらいの仰臥位になるように調整してください。介護者は要介護者が飲み込んだことを確認してから、食事の補助を行います。

また、食べた直後に横になると、胃食道逆流現象が起きて誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。胃食道逆流現象とはいわゆる胸焼けのことです。胃酸が食道に逆流して、気道に入る恐れがあります。

可能な限り、食べてから1時間半程度は横にならないようにしましょう。難しいときは、左を下にして寝ることが大切です。胃の構造上、右を下向きにして横になると、逆流が起こりやすくなります。

このように食事の前後は、要介護者に正しい姿勢になってもらうことが大切です。介護者は、上手く誘導するとよいでしょう。

また、食事に集中できず誤嚥につながる可能性があるため、テレビなどは消しておくことをおすすめします。

喉の筋肉を鍛える

喉の筋肉を鍛えることは、飲み込む力を取り戻し、誤嚥性肺炎の予防効果が期待できます。

特に、男性は女性よりも喉が衰えやすいといわれているため、意識して鍛えるようにしましょう。

日常生活でも取り入れやすい、喉の筋肉を鍛える方法をまとめます。

  • 会話をする
  • 大きな声で笑う
  • カラオケをする
  • 裏声を出す感覚で発声する

特に大きな声で笑うことは、免疫力アップにもつながるためおすすめです。要介護者との会話を楽しみ、喉の筋肉を鍛えていきましょう。

丁寧な口腔ケアを心掛ける

丁寧な口腔ケアを心掛けると、誤嚥性肺炎のリスクを下げられます。口腔ケアを実施すると、免疫力が向上し、口腔内の細菌の数が減る効果があります。

負担をなるべく少なくして効果的に口腔ケアを行いたいときは、口腔用スポンジブラシを使用する方法がおすすめです。口腔用スポンジブラシとは、粘膜について汚れを優しく取り除く棒状のブラシです。

スポンジブラシは先端が柔らかいスポンジになっていて、小さい汚れやねばつく汚れを優しく落とすことができます。むせやすい、食べかすや痰が残りやすいという要介護者の口と舌の汚れを、あまり手間をかけずに綺麗にすることができます。

口腔ケアをしっかり行うことで、誤嚥性肺炎だけでなく、口腔の機能を維持することにもつながります。口腔用スポンジブラシをはじめとする口腔ケアグッズを上手く利用して、丁寧に行っていきましょう。

まとめ

高齢化が進むことで要介護者も増え、今後、誤嚥性肺炎の患者はますます増えると考えられています。

在宅介護中にできる対策は、食事の内容を見直す、口腔ケアを行うことなどがあげられます。誤嚥性肺炎を防ぎ、要介護者にいつまでも元気に過ごしてもらいましょう。