口腔ケアを拒否!?歯ブラシが嫌いな方へのアプローチをご紹介

2023.01

介護の現場でよく聞かれる口腔ケア時のトラブルの一つに、口腔ケアの「拒否」があります。

口腔ケアは、むし歯や歯周病を予防するだけでなく、感染症や認知症の予防に繋がることから、介護の現場ではとても重要なことなのです。

そんな大切な口腔ケアなのに、拒否された経験はありませんか?

口腔ケアそのものが嫌なのか、口腔ケアで使用するアイテム(歯ブラシ等)が嫌なのか、要介護の方が拒否してしまうには、理由があるはずです。

口腔ケアを拒否する理由が分かれば、改善・対策もできます。
そこで今回は、口腔ケアを拒否する理由とその対策をまとめます。

要介護者が口腔ケアを嫌がる理由とは?

要介護の方にとって口腔ケアは欠かせないものですが、もし自分が他の人に口の中を触られることになったらどうでしょうか。少し抵抗感がありませんか?

お口の中を自分以外の人に触られたり、見られたりするのは、要介護の方に限らず誰しもが抵抗感のあるものなのです。

自分自身で口腔ケアができない状態の要介護の方や認知症の方は、介護士などの第三者が口腔ケアを行うしか方法がありません。

近年、むし歯や歯周病の予防に口腔ケアの重要性が見直されています。
特に、高齢者、要介護の方や認知症の方にとって、むし歯や歯周病によってお口の中が侵されることは、口腔内のトラブルだけなく、その他の様々な病気に繋がるとも言われています。

しかし、介護者が口腔ケアを頑張ってやればやるほど、拒絶されたり、お口を開けてもらえない、さらには介護士の指を噛もうとするなど、拒否をされた経験はありませんか?

嫌がる口腔ケアを無理強いすることはできないけれども、口腔ケアは大切だからしっかりやりたい、どうしたらいいだろうと困ってしまうといった方もいらっしゃると思います。

では、口腔ケアをなぜ嫌がるのか、その理由を考えてみましょう。

ただお口を見られる・触られるのが嫌

第三者に自分の口の中をチェックされることが嫌だという理由で口腔ケアを拒絶する方もいます。

かつての口腔ケアで痛い思いをしたなどの悪いイメージが残っている

これまでの口腔ケアで痛い思いをしたことを記憶していて、口腔ケアの時に思い出して拒絶反応が出てしまいます。

認知症で口腔ケアの意味を理解できない

認知症になると様々なことに不安を覚える場合があります。口腔ケアもその一つです。
お口の中を触られることに不安を覚え、歯ブラシなどがお口の中に入る事に対しても恐怖(不安)が募ります。時にパニックを起こしてしまう場合もあります。

むし歯などでお口の中に痛みがある

むし歯や歯周といったお口の中のトラブルが原因で、歯ブラシなどが入ることで痛みを伴い、結果的に口腔ケアを拒絶していまいます。

口腔内に異物(歯ブラシなど)が入ることが嫌い

舌の上に異物が入ることで、吐き気を伴う方がいらっしゃいます。

歯ブラシが嫌な人への口腔ケアの方法とは?

認知症の症状がある場合、脳のコントロールがうまくいかず、口腔ケア中にお口に入った歯ブラシを噛んでしまうという反射行動が起きる場合があります。
この反射行動が起きてしまうことで、歯ブラシが嫌いになったり、怖くなったりする方もいらっしゃいます。

そんな時は一体どうしたらいいのでしょうか。

短時間でケアをする

まずは口腔ケアに時間をかけすぎないことがポイントです。
短時間で効率よく口腔ケアを済ませるよう、ケアの仕方を工夫しましょう。

例えば、歯ブラシの毛が360度全体についている歯ブラシ「360度歯ブラシ」を使うと、歯ブラシの角度を細かく変えたりする必要がないため、口腔ケアを短時間で行うことができます。

ケアアイテムを変えてみる

例えば「スポンジブラシ」を使用してみてはどうでしょう。スポンジブラシはお口の粘膜を効率よく掃除できるアイテムです。先端のスポンジの形状や硬さも様々なものがあるので、要介護者のお口の中の状態に合わせて選ぶことができます。スポンジブラシであれば、歯茎を傷つけることなく、優しく汚れを取ることができます。

また、歯ブラシを使わずに「歯磨きウェットティッシュ」を使用すると、水を使わずに口腔ケアができるので、誤嚥の恐れがなく安全に口腔ケアができます。

お口が乾燥していると口腔ケア時に痛みを伴うことがあり、口腔ケアを拒否する原因にもなります。口腔内が乾燥している場合には「保湿ジェル」を口腔内に塗って乾燥を防ぐ方法も効果的です。乾燥していると口腔内は菌が繁殖しやすく、歯周病の原因にも繋がりますので、保湿ジェルを使用して予防しましょう。

気持ちのいい口腔ケアを行うために

要介護の方に口腔ケアを「気持ちのいい」ことだと思ってもらえれば、スムーズに口腔ケアを行えるようになるかもしれません。
そのためには、歯ブラシでゴシゴシと力を入れて磨くのではなく、優しく、かつスピード感を持って行うことがポイントです。また、時には一旦休憩を入れながらケアを行いましょう。

今、行っているケアについてその都度丁寧に説明し、要介護者が不安に思うことを少しでも取り除くことも大切です。
そして、決して無理強いをせず、要介護の方の心に寄り添う口腔ケアを心がけましょう。