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高齢者の口腔乾燥対策! 歯科医師や歯科衛生士にできることとアイテム選び

2023.03

みなさんこんにちは!歯科衛生士の中村です。

今回は、「口腔乾燥」について考えていきたいと思います。みなさんは普段お口の中の乾燥を感じる時はありますか?
朝起きた時?風邪薬を飲んだ時?または、歯科医院での治療中にお口を開けっぱなしにしている時?
乾燥しているとネバネバ、ベタベタ、パリパリ、ピリピリして、とても不快ですよね。でも、それはほんの一瞬のことです。
高齢者、特に要介護状態にある患者様たちは、普段からずっとこのような状況に置かれていることが多いのです。
唾液が少ないとはどういうことか、唾液の働きとは、何が起きるのか、歯科医師や歯科衛生士には何ができるのか。一緒に考えていきましょう!

口腔乾燥とは?

唾液の分泌される量が減少したり、または分泌されなくなってお口の中が乾燥した状態のことをいいます。
唾液腺から分泌される平均的な唾液の量は、約1~1.5l/日ですが、さまざまな原因によって唾液の分泌が減ると、口の中のうるおい度が減り、乾燥するようになります。

なぜ乾燥が起きる?

【加齢】30代をピークにして唾液が減少し始め、70代にはピーク時の3割ほどにまで減少
【口呼吸】高齢者の場合、口の周りの筋肉が衰えてくる
【脱水】水分摂取が少なかったり、下痢や嘔吐などで脱水や電解質異常を生じた場合
【疾患】糖尿病や甲状腺機能障害、尿崩症、シェーグレン症候群など
【薬の副作用】抗うつ剤や抗不安薬、降圧剤、鎮痛剤など
【ストレス】自律神経の乱れ

などによって起こります。
加齢自体は必ずしも口腔乾燥の原因とはならず、加齢に伴う全身疾患や服用薬剤が唾液の分泌に影響します。

おさらい!8つある唾液の働き

①自浄作用

歯の表面などについた食べカスを自ら洗い流す作用

②抗菌作用

リゾチームやラクトフェリンに代表される抗菌作用を持つ成分が口の中の細菌増殖を抑制する

③消化作用

消化酵素のβアミラーゼがデンプンを分解する

④pH緩衝作用

酸性に傾いた口の中のpHを中性に戻す

⑤再石灰化作用

脱灰状態を回復させ修復する働き

⑥潤滑作用

軟組織部の動きを滑らかにする潤滑剤の作用があり、粘膜保護、発声を助ける

⑦溶解作用

食べ物、飲み物の味を感じさせ、噛み砕く、飲み込みやすい大きさにする

⑧粘膜修復作用

食べ物などの刺激でダメージを受けた口腔内を修復する

よって、唾液が少ない高齢者は、口の中の自浄作用が低下し細菌が増殖する、デンプンを十分に消化できず、味を感じにくく、飲み込みづらい、食後pHの低い時間が長くなり再石灰化されず、粘膜の細かい傷が治りにくい、といったつらい状態に長くさらされていることになります。
さらにそれだけではなく、これらの状態の結果、
むし歯(特に根面むし歯)や歯周病になりやすくなるほか、口臭や粘膜の感染症、味覚障害、嚥下障害などを引き起こします。

唾液を分泌させよう・唾液の作用を補おう

唾液腺マッサージを5〜10回繰り返す

耳下腺…耳たぶの少し前、上奥歯あたりに指を当て指全体で優しく押す
顎下腺…顎の骨の下の柔らかいところにある。耳の下から顎の先まで優しく押す
舌下腺…顎の先の尖った部分の内側にある。下から舌を押し上げるように両手の親指でぐーっと押す

長時間保湿できるジェルを使用する

マッサージをして一時的に唾液を分泌させることはできても、それを維持させることは難しいですね。ご自身でマッサージできれば良いですが、そうでない場合も多くあります。
そんな時は保湿ジェルを使用します。

【ポイント】

  • 長時間保湿する
  • 伸ばしやすい
  • 長時間固まらない
  • 垂れにくく塗布しやすい
  • 咽頭へ落下しにくい
  • べたつきにくい
  • 低刺激
  • 除去しやすい

舌や頬粘膜に指やスポンジブラシを使用して塗布し、その後吐き出していただくか、拭き取ります。

殺菌作用に着目した製剤を使用する

高齢者は加齢や歯周病による歯肉退縮を起こしている場合が多く、そこに口腔乾燥が重なると一気に根面むし歯が進行します。
そこで、歯磨剤を工夫することがポイントになります。むし歯だけでなく歯周病のケアも同時にできるものがあるので、そちらがおすすめです。
また、ジェルタイプは、水なしで使用できるタイプがあり、うがいや吐き出しが難しい患者様も吸引管やスポンジブラシの吸い取りや拭き取りで済みます。

アイテムを選ぶポイントは?

  • むし歯と歯周病や口臭ケアができる成分を配合している
  • →フッ化第一スズ/フッ化ナトリウム/ベンザルコニウム塩化物など

  • 操作性の良い性状であること
  • →ジェルタイプは柔らかく歯に密着しやすいので、歯と歯の間までいきわたりやすい。泡立たないので使用後のすすぎや水が不要

  • フッ素は1,450ppmの高配合のものを選ぶ

まとめ

普段から当たり前に唾液が正常に分泌されて乾燥を感じないでいると、そのつらさや不快さを忘れてしまいます。
口腔乾燥は、不快なだけでなく、むし歯や歯周病の歯科治療の必要性を高めてしまいます。
私たちの知識やケアで、それらの治療のリスクを減らすお手伝いをしましょう。

最近は、長時間保湿できる操作性の良いジェル、殺菌作用に着目した歯磨剤がどんどん開発されています。
いつものアイテムも良いですが、時々新しい製品を試して、患者様一人一人にあったアイテムを取り入れ、より快適に効果的にケアしていきましょう。

この記事がみなさんの参考になれば幸いです。