訪問歯科衛生士の役割って?何をどこまで介入したらいいの?
2023.02
歯科医師、歯科衛生士の皆さん、こんにちは!
今日は訪問歯科における、歯科衛生士の役割、必要なスキルから心構え、介入の深さについて考えたいと思います。
訪問歯科と関わって、次のような悩みにぶつかったことはありませんか?
「私の行っているケアは足りている?それともやりすぎ?」
「もっと〇〇してあげたい!でも、良いのかな?」
「訪問歯科に興味がある。だけど、何が必要なんだろう?」
真剣に取り組むからこそ、悩みや疑問は尽きません。そして、やるからには法律やルールに則って安全に、かつ効果的なケアを行っていきたいですよね。
今回の記事が、そんなお悩みを持つ方、これから訪問歯科に挑戦しようとしている方の参考になればと思います。
訪問先の種類
訪問先は主に患者様の①居宅または、②施設に分かれます。
①居宅
- ご自宅
- 高齢者専用賃貸住宅(サービス付き高齢者向け住宅など)
- 優良老人ホーム
- グループホーム 等
②施設
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 病院(急性期・回復期・慢性期など)
注意すべきマナー
上記いずれの訪問先であっても、患者様の“パーソナルエリア”に「入らせていただく」という意識を忘れてはいけません。
- 来訪目的と自己紹介、初めましてのご挨拶
- 「入ってもよろしいでしょうか?」の一言
- お部屋が暗ければ「電気をつけてもよろしいですか?」
- ケアに必要不可欠なお水を使う場合は「水道をお借りてしてもよろしいでしょうか?」
といった声がけを丁寧に行い、お互いに気持ちのよい時間を過ごせるよう意識しましょう。
訪問歯科衛生士の役割
①口腔内清掃・ケア
死因第5位「肺炎」の大きな原因とされる「誤嚥性肺炎」の予防に繋がります。
(出典:令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/index.html)
②摂食嚥下機能の評価・支援・リハビリ
唇・頬・舌・喉・首の筋肉の機能の維持や回復。
動かせる、噛む、飲み込みやすくすることの機能の維持・回復を目的としています。
③周術期(在宅ターミナル)
患者様の術前・術中・術後のケア。
口腔由来のトラブルによって治療や手術に合併症が起きないよう管理すること。患者様一人一人の病気や生活に合わせた対応が必要となります。
④患者様の家族(キーパーソン)や介助者(ケアマネージャー・施設スタッフなど)の相談対応
介護やケアによる心理的負担を和らげる。
相談事に共感し、寄り添い、コミュニケーションを積極的に取りましょう。
⑤他業種との連携
医科、薬科、介護・福祉系、リハビリテーション専門職のほか、最近は医療ソーシャルワーカー、自治会などの地域支援者、NPO法人、ボランティア団体などとも連携をとります。
このように、歯科衛生士の役割は口腔ケアだけでなく、患者様と関係者が少しでも快適に
過ごせるよう他業種と連携し、そして患者様自身が最期の時まで「食べられる・話せる・笑える」お口づくり支援をすることとなります。
訪問歯科に必要なスキル
①ケアの流れを組み立て、実施できるテクニック
患者様やご家族、介助者のニーズやウォンツをしっかりと把握し、それに的確に対応できるテクニックが必要です。
②コミュニケーションによる情報収集力
①のためには患者様やご家族、介助者の状況を関係者と共有することが必須であり、それには良好なコミュニケーションが欠かせません。
特に訪問先での「雑談」が大事になってきます。「雑談」の中から有用な情報を得ることができます。時に、それが患者様のQOLに直結することもあるくらい大切な取り組みです。
③口腔ケアの必要性や重要性を伝える力
端的な表現ではありますが、「お口は栄養と感染の入り口」という認識を共有しましょう。
食事の時間が早くなった、表情が豊かになった、少しうがいができるようになったなど、患者様の変化と口腔ケアを関連付けて、口腔ケアをしている最中に説明するのがポイントです。
歯科衛生士の心構え
どんな人にも言えることではありますが、訪問歯科を受診する患者様は特に、ご容態が急変することがあります。患者様のために、また自分のために、きちんと心構えを持って臨みましょう。
- 一期一会の意識を持って、後悔しない接し方をする
- 今日できることを今日精一杯やる
- お互いに無理しない、させない
- 笑顔と優しい言葉がけを常に心がける
じゃあ、どこまで介入するの?
「出会った患者様に、求められたことを、できる最大限まで」
- 何を求められているのか?何がしたいのか?をコミュニケーションで把握する
- 常に自問自答し、自分や仲間たちとできることを最大限考え、やり遂げる
ポイントは、「ニーズ」と「ウォンツ」を把握することです。これは、コミュニケーションが取れていなければできませんね。突き詰めると歯科衛生士のこの仕事の要は、患者様や関係者とのコミュニケーションに尽きるのかもしれません。
歯科衛生士としてできること、一人の人間としてできること、仲間の力を借りてできること、色々な視点から考えられるといいですね。
まとめ
訪問歯科衛生士さんの役割と介入について、いかがでしたか?
口腔ケアのテクニックもさることながら、コミュニケーション能力の重要性が感じられたかと思います。目の前の患者様に少しでも豊かな人生を送っていただけるよう、日々研鑽を続けましょう。