認知症患者の理解・思いやりケアと 歯科衛生士の役割

2023.02

歯科医師、歯科衛生士の皆さん、こんにちは!
今日は「認知症の患者様」について考えたいと思います。

認知症の患者様は常に、不安やストレス、混乱にさらされ、そして焦りや悲しみも抱えています。孤独や絶望感を感じているかもしれません。

そんな方々に、私たちは何ができるでしょうか。
皆さんはどのように対応していますか?

備えあれば憂いなし。
どのような患者様に対しても自信を持ってケアができるよう、準備しましょう!

認知症を知ろう

一言で認知症と言っても様々な種類があります。
今回は認知症のなかでも特に代表的な3つについて、それぞれどんな特徴があるか、また、摂食・嚥下機能障害や認知機能障害について学びましょう。

①アルツハイマー型認知症

最も多い型の認知症で、認知症全体の67.6%を占めます。
脳神経が変性し、脳の一部が萎縮していく過程で発症します。記憶障害である物忘れから始まり、ゆっくりと進行します。
摂食・嚥下機能は保たれる傾向がありますが、末期になると認知機能の低下が進み、たとえば、箸を食べるための道具として理解できないといった症状があらわれます。

②血管性認知症

認知症全体の19.5%と、アルツハイマー型に次いで2番目に多い型です。
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により発症します。障害の起きた脳の部位によって症状が異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状は個人差が大きいため、‟100人いれば100通りのケア”が必要となります。
ゆっくりと進行することもあれば、段階的に急速に進む場合もあります。また、①と②が合併する「混合性認知症」(認知症全体の3.3%)の患者様も多くみられます。

③レビー小体型認知症

記憶障害を中心とした認知症と、動作が遅くなり転びやすくなるパーキンソン症状、繰り返す幻視がみられます。しかし、患者さん自身には病気であるという認識がありません。
男性の方が女性の約2倍発症しやすく、他の認知症と比べて進行が早いのが特徴です。
パーキンソン症状があるため、中期くらいから摂食・嚥下障害が起こり始めます。
全体としては4.3%の割合ですが、高齢者の認知症だけで見ると約20%を占めます。

上記3つの他に、
「前頭側頭型認知症」(認知症全体の1%)や「アルコール性認知症」(認知症全体の0.4%)などがあります。

(出典:https://www.tsukuba-psychiatry.com/wp-content/uploads/2013/06/H24Report_Part1.pdf「都市部における認知症有病率と認知症の 生活機能障害への対応」(H25.5報告))

接し方のポイント

前回の記事(https://quom.jp/blog/20230221/)でも紹介したように、信頼関係を築くためにはコミュニケーションはとても重要な項目です。
特に認知症の患者様には、深い思いやりを持って接する必要があります。

丁寧に、ゆっくり、ひとつずつ

  • 常に初対面のように丁寧に挨拶し、急に現れて驚かすことのないようにそっと入室する
  • 「正面から1対1」で目線を合わせ、ゆっくりと短い言葉を意識して笑顔で話す、相槌をうつ
  • ひとつずつ確認しながら、患者さんのペースに合わせて行う

認知症の患者様はイレギュラーな出来事、突然の出来事が起こるとストレスを感じ、混乱してしまいます。
こちらはいつもの業務だとしても、常に患者様の立場に立って、丁寧に、ゆっくりと、ひとつずつ進めなければなりません。

いつもの、あの人

「いつもの人がいつもの事をしている」と思ってもらえるよう、定期的に顔を合わせて途切れなく関わることが大切です。

健康な方も、定期検診等で同じ歯科医師や歯科衛生士に継続的に診てもらえると安心しますよね。
それは、いつもの人であれば、いつもの流れ、いつものやり方でやってもらえるためです。
認知症の患者様は、この点に非常に敏感です。途切れることなく関わり続けて日常の一部となり、ストレスを極力減らしたケアをしてさしあげましょう。

してはいけないこと、あるべき姿勢

  • 叱る、否定する、責める、急かす、強要するは、全てNG
  • 受け入れる、静かに見守る、傾聴する、理解を示す

たとえ認知症になっても、プライドや羞恥心といった感情がなくなるわけではありません。何が原因で叱られたのかを忘れて、不快な思いだけが残ってしまいます。理屈よりも感情や共感によるコミュニケーションをとることが大切です。
「あなたのことを理解したい」「もっとあなたのことを教えてくれたら嬉しい」という姿勢を持ち続けましょう。

認知症患者様への歯科衛生士の役割とは?

それでは、私たち歯科衛生士はどのようなことをしてさしあげられるでしょう。

  • 認知症患者様との楽しく適切なコミュニケーション、口腔ケア
  • 認知症患者様の義歯の衛生管理
  • 介護者への衛生管理指導や相談窓口
  • 他業種連携のための情報の窓口

可能な限り早い段階で介入し、患者様一人一人の状態を見極め、介護者さんや他担当者さんたちと密なコミュニケーションをとりながら、患者様が1日でも長く快適に過ごしていただけるよう、尽力しましょう。
日々工夫し、一番近くでコミュニケーションをとっている私たち歯科衛生士なら、きっとできるはずです。

まとめ

いかがでしたか?
今回は、認知症について基本的な知識、関わり方のポイント、歯科衛生士の役割についてご紹介しました。
これからの超高齢化社会において、認知症患者様は増加傾向で推移していくと考えられています。(出典: 平成29年 高齢社会白書外部サイト 第1章 第2節 3 高齢者の健康・福祉よりhttps://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html

基本的な知識を持ちつつ、時と場合に合わせたケアをご提案できるあたたかい歯科衛生士になりましょう。
この記事が歯科衛生士の皆さんのお役に立てたら幸いです。