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オーラルフレイルとは? 歯科衛生士の関わる理由と目指すゴール

2023.03

みなさん、こんにちは!歯科衛生士の中村です。
今回は、高齢者とはきってもきれない関係、「オーラルフレイル」の関わりについて考えていきましょう。

そもそもフレイルとは?

フレイルは、英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源で、「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などを意味し、健康な状態と要介護状態の間の段階のことを指しています。

フレイルは大きく3つの種類に分かれます。

①身体的フレイル

運動器の障害で移動機能が低下した「ロコモティブシンドローム」、筋肉が衰える「サルコペニア」が代表的な例です。高齢になると、何もしなければ筋力は自然と低下します。

②精神・心理的フレイル

高齢になり、定年退職、パートナーを失ったりすることで引き起こされる、うつ状態や軽度の認知症の状態などを指します。

③社会的フレイル

加齢に伴う社会とのつながりが希薄化することで生じる、独居や経済的困窮の状態などをいいます。

これら3つが連鎖していくことで、老い(自立度の低下)が急速に進むことを「フレイルドミノ」と呼びます。ドミノの入り口がどこになるかは、人それぞれ。老いとは、決して身体の問題だけではないことがわかります。

ですが、フレイルには「可逆性」という特性もあります。自分と向き合い、前向きに予防に取り組むことで、進行を緩やかにし、健康に過ごせていた状態に戻すことができます。

フレイル予防のための3本柱

フレイル予防のための「3つの柱」では、

①栄養(食・口腔機能)

バランスのよい食事をとり、何でも食べられるよう口腔機能を保つ

②身体活動

散歩や有酸素運動をして、じっとしている時間を減らす

③社会参加

人と関わる機会を増やし、生きがいを感じる生活を心がける

が掲げられています。
栄養については、食事と「口腔の定期的な管理」が重要となります。
本人によるセルフケアのみでフレイル予防することは難しく、さらに介護度が上がるほど口腔ケアのニーズも高くなり、よって、私たち歯科衛生士による継続的な口腔健康管理が必要となるのです。

オーラルフレイルとは?

日本歯科医師会オーラルフレイル対応マニュアル2020年版には、オーラルフレイルの概念として、

【第1レベル】口の健康リテラシーの低下

口腔への健康意識が薄れていく段階

【第2レベル】口のささいなトラブル

「食」を取り巻く環境悪化の徴候が現れる、以降の重度化を予防する重要なレベル

【第3レベル】口の機能低下

「口腔機能低下症」と診断される

【第4レベル】食べる機能の障がい

「摂食嚥下機能障害」として診断される

という4つのレベル構成を紹介しています。
口にかかわる些細な衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしておくと、

  • 口の機能低下
  • 食べる機能の障がい
  • 心身の機能低下

バタバタとドミノが倒れていくように機能が低下していく「フレイルドミノ」に陥る可能性があります。
日本歯科医師会の『歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル』の調査結果では、オーラルフレイルの高齢者は、そうでない人に比べて身体的フレイル発症リスクが2.4倍、死亡リスクは2.1倍だったという調査結果も出ています。

歯科衛生士が関わる3つの役割

東京歯科大学短期大学菅野先生によると、次の3つがあります。

  • 患者様の様々な情報を集める
  • 上記で述べたとおり、オーラルフレイルの診断には、口腔以外にも心身の様々な情報が必要です。歯科衛生士は、口腔ケアや口腔機能訓練などの際に、多くの情報を効率的に集めることができます。

  • 患者様との関係性が築きやすい
  • オーラルフレイル予防には、患者様自身がオーラルフレイルに気がついて、日頃の行動を変えることが重要といわれています。歯科衛生士は、口腔ケアや口腔機能訓練などで患者様を指導するのが得意です。患者様と接する機会も多いため、良い関係性が築きやすく、患者様の行動変容を促しやすい存在です。

  • 多職種連携による改善がしやすい
  • オーラルフレイル予防においては、口腔機能だけでなく、栄養や精神心理問題や社会的問題も同時に改善する必要があります。そのためには多職種との連携が必須であり、その機会が多い歯科衛生士はオーラルフレイル改善のため他職種と協働しやすい立場にいます。

では、歯科衛生士がオーラルフレイルに対応するためには、具体的に何が重要なのでしょうか。
それは、患者様の日常の動作を注意深く観察して変化を見出すことです。

例えば、
【食べる】開口量、閉口力、口唇閉鎖、顎運動、嚥下
【話す】舌機能、呼吸機能、表情筋、記憶などの高次機能
【歯磨き・うがい】口唇の閉鎖、頬のふくらみ、手指の巧緻性、手・顔面・頭部の協調運動

このような口腔機能の観察力を磨くとともに、フレイル全般や栄養の知識を習得し、多職種連携に必要な専門用語の理解を深めることも必要です。

まとめ

いかがでしたか?
フレイル、オーラルフレイルともに、変化に気がつき、早い段階で介入し、歯科医師、歯科衛生士だけでなく多職種と連携して対応していくことが重要ですね。

オーラルフレイル対応の目指すゴールは、口腔の健康を維持・向上することで、その結果、栄養をしっかり口から摂ることや、食べる楽しみや社会とのつながりを通じて、それぞれが望む暮らしを送ること、より多くの人のQOLを高め、健康寿命を伸ばすことではないでしょうか。

今後、多業種連携に必要な専門用語の解説ができたら良いなと考えています。
この記事が少しでも多くの方の目に留まれば幸いです。