高齢者にとって必要なお口のケアとは? 介護者が要介護者に配慮するポイント
2021.11
口腔ケアは、口の中を清潔に保つのはもちろん、食べる・話すなど口の機能を維持するためにも大切な要素です。またお口の中の細菌が増えてしまい歯周病などを発生すると全身の健康にも影響することが近年わかってきています。
そこで今回は、身体全体の健康維持や健康寿命を延ばすことにもつながる要介護者向けの口腔ケアを紹介します。
高齢者にとっての「口腔ケア」とは?
口腔ケアには、「器質的口腔ケア」と「機能的口腔ケア」があります。
器質的口腔ケアは、口腔内の疾病を予防したり細菌の数を減らしたりして、口の中を清潔な状態に保つことを指します。一方、低下した口腔機能に応じて、口や舌の体操・唾液腺や筋のマッサージを実施するのが機能的口腔ケア。「食べる」「話す」「飲み込む」といった機能の改善や維持を目指します。
体の抵抗力が弱まっている高齢者は、口腔内の細菌が原因となり大きな病気につながることも。例えば高齢者の死亡原因の上位にランキングされる肺炎 。年齢による機能低下により、本来食道を通って胃に入るはずの食べ物の一部や、唾、痰などが間違って気管に入り込むことが高齢者では起こりやすくなります。その際、口腔ケアを怠っていると増加してしまった病原菌もいっしょに肺に侵入し、病気を引き起こしてしまうのです。
この場合、口腔内で増殖した口腔内ケアを適切に行っていれば、多くは予防が可能と言われています。
また、噛む機能、飲み込む機能が衰えると、食べる意欲が低下し、栄養不足や体調悪化につながります。さらに、話すのがおっくうになり、周囲とのコミュニケーション不足に陥りがち。意欲的な生活が難しくなると、健全な精神を保てなくなり、認知機能の低下やうつ症状 などの問題に発展するケースも少なくありません。
口の中を健康に保つことは、心と体、全身の健康につながっているのです。
要介護者の口腔ケアで注意するポイント
介護者は要介護者が難しいケアの手伝いをする
一般的に高齢者は視力が落ちたり、手が上手く動かせなかったりと、自力で口腔内を清潔に保つのは難しいと言われています。しかし、過剰な手伝いは本人の残っている体の機能を衰えさせてしまう一因。
できない部分、または仕上げとして介助者が手を貸すようにしましょう。また、口の中を他人に見られるのは恥ずかしいと拒否される方もいます。必ず丁寧に説明して、同意を得てから行ってください。
できるだけ要介護者自身で歯磨きを、介助者はどこまで手伝えばいいの?
口の中はとても敏感・事前のチェックも大切
口の中はとても敏感です。髪の毛が1本でも口に入れば、違和感や不快感がありますよね。そのため、力加減には十分注意しましょう。要介護者の場合、すでに虫歯や歯周病にかかっていることが多く、痛みが伴うケースもしばしばあります。
口腔ケアを始める前に、痛みの原因となるものはないかチェックしておくとスムーズに行うことができます。
水の使用は最小限に
口腔ケア中は、水分や汚れが気管に入らないように注意してください。必要に応じて、吸引機や綿棒・ガーゼで水分をふき取りながら、水の使用は最小限にとどめましょう。また、寝たままケアを行う際は、頭部を首から30~40度ほど角度をつけてあげるなど適切な体位で行うことが誤嚥防止に繋がります。
実際にできる口腔ケア
口腔保湿ジェル
口腔内が乾燥すると、細菌が増加して炎症が起こりやすくなります。また、粘膜も傷つきやすく、細菌への感染リスクが高まるため、口腔保湿ジェルなどで保湿ケアを行います。味・粘度・効果・使用感など、好みもありますので、要介護者に合ったものを選んであげましょう。
口腔内の清掃
口腔内を湿らせてから、付着している汚れを取り除いていきます。使用するアイテムは、歯ブラシ・スポンジブラシ・舌用クリーナー・歯磨き剤・うがい薬・コップ・タオルなどです。ブラッシングの方法もいくつか種類があります(スクラッピング法・ローリング法・バス法など)。歯の状態によって適切なブラッシング方法を選ぶことが大切です。
口腔機能訓練
口腔内が乾燥する原因は、加齢や薬の服用による唾液の分泌量の低下です。舌体操や嚥下体操で唾液の分泌を促しましょう。
健康寿命を延ばすために高齢者が生活に取り入れたい「口腔トレーニング」のすすめ
マッサージ
唾液腺や口腔粘膜のマッサージ を行うことでも、唾液の分泌を促進することができます。
まとめ
口腔ケアを行うことで、口腔内を清潔に保ち、いつまでも食事が美味しく食べられるために必要不可欠なケアです。
口腔ケアは毎日行うことが重要です。より「楽しく・気持ちよく」、口腔ケアが継続できるよう、口腔保湿ジェルをはじめ、要介護者の好みや口腔状態にあったアイテム・方法で行うことをおすすめします。