要介護者への口腔ケアでよくある問題は?注意するべき項目チェック
2021.12
介護者が要介護者に口腔ケアを施す場合、自分で磨くことができる人に比べて問題が起こりがちです。それぞれの問題点を解消し、ポイントを押さえたケアを行うことで、介護される側は口腔ケアの時間が「気持ち良い」「楽しい」と感じることができます。また介護する側もケアにかかる作業ストレスを軽減できるというメリットを見込めます。
歯磨きや、マウスウォッシュ、歯間ブラシ、舌ブラシなど日常生活に欠かせない作業だからこそ、双方にとって快適な時間であるべきです。そこで今回は要介護者に口腔ケアを行う際によくある問題点と、注意するべき項目チェックをご紹介いたします。
要介護者の口腔ケアで起こり得るトラブル
要介護者が口腔ケアを嫌がってしまう
要介護者が口腔ケアを嫌がると、口腔内を衛生的に保ち続けることが難しくなります。
その結果、虫歯や歯周病といった症状が出たり、悪化したりして「噛めない」「食欲が落ちる」「気持ちがふさぐ」など健康面や精神面に悪い影響をもたらします。
唇や歯肉から出血する
口腔内の乾燥や、歯周病などの症状がある場合は出血することがあります。
口腔ケアの最中に出血すると、要介護者はその度に痛みや血の味などの不快感を感じることに。要介護者が嫌がって中断するなど、十分なケアが行えなくなる可能性があります。
介護者が口腔ケアに疲労感を感じてしまう
介護者自身が「やりづらさ」を感じたまま口腔ケアを続けていると、疲労やストレスとして蓄積されてしまいます。
そうすると口腔ケア自体がおざなりになることも。これにより要介護者の口腔環境が悪化して、介護者にさらに負担がかかるという悪循環に陥ることがあります。
介護者の知識やスキルの不足
介護者が丁寧に、適切なタイミングで口腔ケアを施していても、知識やスキルの不足から十分な効果が得られないケースがあります。
「解決するべきポイント」を整理する
要介護者が口腔ケアを嫌がってしまう原因の多くが、ケア中の痛みや不快感にあります。
「何が嫌なのか」「どんなことに気をつけるべきなのか」を考えて、まずは「解決するべきポイント」を洗い出しましょう。
嫌がる理由が「痛み」の場合
口腔ケア中に痛む理由として、以下が挙げられます。
①虫歯や歯周病など口腔内に異常がある
ケアを始める前に口腔内のチェックを行いましょう。虫歯や欠けた歯、化膿している部分の有無など、痛みの原因の有無を丁寧に確認することが大切です。必要であれば、歯科医師の診察や治療を受けましょう。
②あごに問題があり、口を開けることで痛みが生じる
無理に口を開けたり、固いものを食べたりするほか、歯ぎしりや食いしばりなどであごの靭帯や骨格に異常が起こることで、口を開ける行動に痛みや違和感を覚える場合があります。その際は口腔ケアを始める前に「どれくらいまでだったら開けられるのか」「我慢できる程度の痛みなのか」など、しっかりとコミュニケーションを取りながら作業を進めましょう。
「お口が大きく開かない」要介護者の口腔ケア、ポイントとコツをご紹介
③口腔ケア時の力加減が強すぎる
口腔内は非常にデリケート。特に高齢者となると、唾液量が低下し乾燥している場合が多いのでより傷つきやすくなっています。指の入れ過ぎや力加減などへの注意が不可欠です。もしも必要以上の力で磨くと、歯や歯肉を傷つけてしまい、痛みや出血につながってしまいます。
嫌がる理由が「不快感」の場合
口腔ケアを不快に感じる原因として、以下が挙げられます。
①ケアの時間が長い
ポイントを押さえた手際良い口腔ケアを心がけてください。磨く順番を決めると、磨き残しが少なく、効率的にケアが行えます。
②体勢がつらい
頭の位置に注意しなければいけません。そのほか、口腔ケア中は「口を開けたままの時間を区切る」「要介護者に体勢がつらくないかを都度確認する」などの配慮をしましょう。
③ケア用品が合っていない
歯磨き剤の味や、歯ブラシ、歯間ブラシ、口腔ケア用品のテクスチャーなどを要介護者の好みに合ったものや、便利グッズを使うことで、要介護者が口腔ケアを楽しみにするようになるケースも。
介護者にとっても要介護者の対応が楽になったり、時短になったりと、負担が軽くなるケースがあるのでおすすめです。
歯ブラシだとヘッドの大きさや、毛先の柔らかさなどがポイントになります。歯磨き剤だと味やテクスチャーが好みの分かれるところです。
④コミュニケーション不足
また、嫌がる方に無理強いすることは禁物です。口腔ケアの必要性や手順を丁寧に説明して、焦らずゆっくり進めてください。
痛みや不快な原因を取り除き、「口腔ケアは気持ち良い」と思ってもらうことで、スムーズに進められるようになります。
また口腔ケアの必要性や、痛みや不快な理由のヒアリングのほかに、「どんな歯ブラシが好きなのか」「口の中が乾燥していないか」などの会話から「こんなのはどうだろう?」と一緒に快適な口腔ケアグッズを模索するのも要介護者にとって楽しみにつながるかもしれません。
嫌がる理由が「自分でやりたい」という希望が強い場合
①要介護者自身ができることは自分でやってもらう
要介護者ができることは自分でさせてあげましょう。その上で、できない部分や仕上げとして手を貸してあげてください。
また要介護者自身が口腔ケアを行う場合、電動歯ブラシや唾液の吸引機能付きの歯ブラシなど補助機能がついたグッズを利用するのも効果的です。
できるだけ要介護者自身で歯磨きを、介助者はどこまで手伝えばいいの?
②歯科医師の定期検診を受ける
「どうしても全てを自分でやりたい」「介護者に手をつけてほしくない」という要介護者の場合は、やはり口腔ケア状況に不安が残ります。
そういった場合は歯科医師に頼るのも方法の一つです。日常で行うケアのほかにも歯科医院でしかできない施術を受けることが可能です。そのほか歯科医師に普段のケアの相談を行うことができるというメリットもあります。
通院が難しい場合は、訪問歯科などのサービスを積極的に活用するのもいいかもしれません。
高齢者の主な口腔トラブルまとめ、訪問歯科や口の乾燥ケアについてもご紹介
まとめ
要介護者への口腔ケアには、痛みや不快感の問題でうまくいかない場合が多々あります。
しかし事前に口腔内をチェックし、痛みや不快感を取り除いてあげることで、要介護者も介護者も気持ちよくケアの時間を過ごせるようになるでしょう。
また、適切なケアグッズを使い、手際良くポイント押さえたケアをすることが大切です。定期的に医師の検診を受け、よりよい状態をキープしましょう。