高齢者の主な口腔トラブルまとめ、訪問歯科や口の乾燥ケアについてもご紹介
2022.07
健康寿命を延ばすために高齢者が生活に取り入れたい「口腔トレーニング」のすすめ
年を取ると、体と同じようにお口も老化するため、お口のトラブルを抱えている高齢者が多く見られます。口腔トラブルを放置すると、話す・食べる力が衰えて、介護生活になるリスクが高まります。高齢者の生活の質を維持するためにも、口腔内を健康に保つことはとても大切です。
今回は高齢者のお口の特徴と主な口腔トラブル、口腔内を健康に保つメリット、口腔トラブルの予防に効果的なお口の乾燥ケア方法を紹介します。
高齢者に多いお口の特徴と主なトラブル
年齢を重ねた高齢者のお口は、老化現象によって唾液量が低下したり、歯ぐきや歯が劣化したり、口腔内の筋肉が衰えたりします。
また、抱えている病気によっては、唾液の分泌を抑制する作用がある薬を服用している方もいます。
そのため、以下のような口腔トラブルを抱えている高齢者が少なくありません。
- 虫歯
- 歯周病
- 入れ歯が合わない、入れると痛い
- 歯石・歯垢・舌苔の付着
- ドライマウス
- 口臭がひどい
- 食事中にむせやすい、食べ物が飲み込みにくい
- 味覚の変化
高齢者のお口を健康に保つメリット
正常な唾液量が分泌され、口腔内の筋肉が維持できると、お口が清潔になるのはもちろん、そのほかにもさまざまなメリットがあります。
虫歯や歯周病の予防
唾液には歯や口腔粘膜を守り、細菌の増殖を抑制する働きがあるため、虫歯や歯周病の予防効果が期待できます。
かむ力を維持できる
歯や歯ぐきが健康だと、食事をしっかりかむことができます。栄養の吸収が良くなり、体力や免疫力の低下を防げます。
話す力を維持できる
唾液は発音を滑らかにする潤滑油になり、口腔内の筋肉がきちんと動くことで、滑舌よく話せます。
認知症の予防
しっかりかんで食事をしたり、話したりすると、脳の血流が増えて脳細胞が活性化されるため、認知機能の維持が期待できます。
誤嚥(ごえん)の予防
誤嚥性肺炎を引き起こすと、命にかかわります。かむ、飲みこむという動作が正常にできると、誤って食べ物が気管に入るリスクを軽減できます。
QOL(生活の質)の向上
体力や免疫力がキープできると、病気になりにくく、体に活力があふれて積極的に行動できます。また、人とのコミュニケーションがきちんととれることで、気持ちが前向きになったり、表情が豊かになったりします。
訪問歯科診療は保険診療
高額を請求されるのでは?と心配される方も多い訪問診療。ここからは、気になる費用について見ていきましょう。
訪問歯科診療の費用の内訳
訪問歯科診療には、診療費+指導費+治療費がかかります。
- 診療費…毎回の訪問診療にかかる費用です。医療保険対象。
- 指導費(居宅療養管理指導費)…20分以上の指導を行った場合にかかる費用です。歯科医師は月2回、歯科衛生士は月4回まで算定します。介護保険対象。
- 治療費…治療や口腔ケアの内容に応じて発生した費用です。医療保険対象。
口腔トラブルの予防につながるお口の乾燥ケアを紹介
口腔トラブルが起こる原因の1つは、唾液不足によるお口の乾燥です。ここでは、簡単に自宅でできるお口の乾燥ケアを紹介します。
唾液の分泌を促進する
唾液腺を刺激して唾液の分泌を促すには、以下の方法がおすすめです。
- 食事中のかむ回数を増やす
- 唾液腺マッサージ
- 口腔内トレーニング
- 唾液が出やすい食べ物を選んで食べる(レモン、セロリ、梅干し、昆布、納豆、アーモンドなど)
健康寿命を延ばすために高齢者が生活に取り入れたい「口腔トレーニング」のすすめ
こまめに水分補給をする
カフェインが入っている飲料は利尿作用があり、かえって水分が体外に出てしまいます。水やスポーツドリンクがおすすめです。
うがいの回数をふやす
口を閉じて水を含ませる「ブクブクうがい」でも、簡単にお口を潤すことができます。ただし、誤嚥の危険がある方には不向きです。
室内の温度・湿度に気をつける
室内が高温の場合や湿度が低い場合、お口の中も乾きがちです。部屋を適切な室温(20~25℃)・湿度(40~60%)に保ちましょう。熱中症や脱水への対策にもなります。
鼻呼吸を心がける
口呼吸はお口が開きっぱなしになるため、水分がどんどん失われていき、乾燥しがちです。お口の中の潤いを逃がさないよう、鼻呼吸を意識しましょう。
口腔保湿剤を使う
唾液不足を補える口腔保湿剤を活用することで、お口に潤いを与えられます。ジェルタイプ、スプレータイプ、洗口剤タイプ、タブレットタイプなど、好みや状態に合ったものを選びましょう。
まとめ
高齢者が毎日を元気に過ごすためには、口腔トラブルのない健康なお口を維持することがとても大切です。
いつまでもしっかりかんで食事を楽しみ、心身ともに質の高い生活を送れるように、ご紹介した口腔内の乾燥ケアを今日から始めてみませんか?