うるおいが足りないお口、どうやってケアする?

2023.09

皆さんこんにちは。歯科衛生士の中村です。
今回は、うるおいの足りないお口のケアの仕方についてです。

お口の乾燥は特に高齢者や持病のある患者様に見られる傾向ですが、皆さんは日々どのようにケアしていますか?
丁寧で心地の良いケア、さらにはその状態が維持できるような手助けもして差し上げたいですよね。
一体どうしたら良いのでしょうか?今回も一緒に学んでいきましょう!

なぜ口腔内が乾燥するのか?

口腔内の乾燥は、主に口腔機能の低下により引き起こされます。
当てはまる項目がないか確認しましょう。

加齢や疾患による唾液腺の萎縮
服薬の副反応
口を動かさないなどの運動量低下の影響
柔らかいものを食べていることの影響
粘膜の新陳代謝の低下により粘膜の角化が進み、小唾液腺が塞がってしまっている
咀嚼筋の低下により開口状態が続き、唾液が蒸発してしまっている
患者様自身が口腔内の乾燥を感じていない

特に要介護状態の方は、降圧剤や利尿剤など、5〜6種類程度の薬を服用している場合が多く、それらにより口腔乾燥が引き起こされているケースがしばしばみられます。
そのため、口腔ケア時に歯だけでなく粘膜も丁寧に清掃し、それに加えて意識的に口を動かせるよう指導したり、マッサージをして唾液腺を刺激するケアが必要となってきます。
また、姿勢を意識していただいたり、湿度など室内の環境を整えることも手助けとなります。

口腔内の乾燥を予防するケア

乾燥を予防するためには、口腔内からのアプローチと口腔外からのアプローチの2種類があります。
ここは歯科医師、歯科衛生士としての腕の見せ所です!痛みのない気持ちの良いケアを念頭に、安全に丁寧に行いましょう。

  1. 歯みがき剤と保湿ジェルを併用して口腔内を清掃し、粘膜の新陳代謝を促して唾液の分泌促進につなげ、その状態を維持させる
  2. 唾液腺マッサージを行い、唾液の分泌を促す
  3. 口腔周囲筋ストレッチを行って筋肉を刺激し、積極的に動かすことで、開口筋と閉口筋のバランスを整え、閉じやすいお口作りをサポートする

ケアの効果を持続させるための工夫

  • ケア後は枕の位置を調整し、口が開けたままにならないように姿勢を整える。マスク装着も効果的。
  • 室内は適度な湿度になるように管理する。夏なら70%、冬なら40%程度が目安。
  • 2時間に1度程度の保湿の実施。介助者の方に協力をお願いする。

ケアアイテム選びのポイント

保湿ケアには主に以下のようなアイテムを使用します。

保湿ジェル
スポンジブラシ
口腔用ウェットティッシュ(うがいができない場合や、拭き取りが必要な保湿ジェル用)

より効率的で安全にケアを行えるよう、操作性の良さに着目しましょう。

ジェルの性状は、手の甲に出してみて垂れない程度が目安です。ゆるすぎると喉の方へ流れてしまうため、ベタつかず適度な粘度が必要です。

また、スポンジブラシとの相性も大切です。硬く絞ったスポンジブラシで吸い取ることができて、垂れないか、落下しないかを確認しましょう。

時間が経っても口腔内で固まらず、除去しやすいかどうかも大切なポイントです。敏感な粘膜に付着した固まったジェルを除去する場合、患者様は痛みを感じてしまいます。

気持ちの良いケアとは

残念ながら一度のケアで乾燥状態が劇的に改善することはありません。継続的に行うことで徐々に改善します。
そのため、私たちは継続的なケアを安定的に行う工夫が必要となります。これまでも触れてきましたが、常に患者様の立場になって、自分もして欲しいと思うようなケアを提供することが大切です。

温かなコミュニケーション

笑顔で接し、常に声掛けを忘れないこと、施術の際は十分に説明し、また目線の高さを合わせるといったことを心がけてください。

適切なテクニック

適切なテクニックにより、痛くない・素早く的確・主訴から解決するといったことが可能になります。

その結果、ツルツルとした歯面、さらさらな唾液が出て粘膜が保護され痛みが軽減し、口腔内がしっとりします。
患者様ご自身もさっぱりときれいになった感覚があり、話しやすい、食べやすい、飲み込みやすいお口になり、その状態が維持されることで理解と協力が得られ、継続的なケアにつながるといった良いサイクルを作り出すことができます。

また、テクニックだけでなく、「思いやりの心を持ち、優しく触れる」「常にケアされる側の気持ちになり、協力してくださっていることに感謝する」「自分の家族や大切な人にも同じことをするか常に自問自答する」といった心がけを忘れないでください。

そして何より安全第一に進めることが大切です。お互いに無理をせず、少しずつ継続することを意識しましょう。

まとめ

いかがでしたか?
今回はうるおいの足りないお口のケアについてでした。お口の不快感は痛みや臭いだけでなく乾燥も大きな原因となります。
ですが私たちの知識や工夫で改善することができる部分でもあり、患者様のQOLの向上にもつながりますね。
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。